住宅ローン

大きな財産であり、大きな負担のマイホーム
離婚の際に悩むのがマイホームです。残った住宅ローンを誰が払っていくのか。不動産は誰の名義にするのか。保証人の問題など、大きな買い物なだけに悩みはつきません。不動産は価値の大きい財産であり、取得後のローンの負担は長期にわたるため、離婚の際には慎重に取り決めておくことが大切です。
■しっかりと調査を
離婚後、マイホームをどうするのか取り決める前に、不動産の名義や住宅ローンの契約内容など、現状がどのような権利関係になっているかしっかり調査しましょう。

[不動産の名義・価額]
(1)名義について
法務局で不動産の登記簿謄本を取得します。登記簿謄本には不動産の名義は誰か、どのような担保権(抵当権など)が設定されているのかも記載されています。
(2)価格について
不動産業者に査定をしてもらいましょう。不動産の価値を知ることで、不動産を売却すべきか否か、売却しない場合には誰が住むのか、また、どの時期に売却すべきかなど、不動産に対する方針を決める材料になります。

[住宅ローンの契約内容とローンの残額]
(1)ローンの契約内容の確認
住宅ローンの契約書を確認して、誰が債務を負っているか確認します。また、当初の契約から内容変更されている場合もあるので、契約書類一式を確認する必要があります。
契約は一般的に、次のようなパターンがあります。
パターンA 夫:主債務者  妻:連帯保証人
パターンB 夫:連帯債務者 妻:連帯債務者
パターンC 夫:主債務者  妻:債務負担なし(保証協会等の利用)

(2)住宅ローンの残額の確認と注意事項
住宅ローンがどのくらい残っているかは、とても重要です。
住宅ローンの残額は「償還表」などで確認できますので、現在の正確な残額はしっかり把握しておきましょう。

①アンダーローン
不動産の査定金額よりもローンの残額が下回り、不動産を売却することにより利益が出る状態のことをいいます。売却で得た利益を夫婦で分割する方法が最も簡単です。売却をしない場合には、ローンの負担をどうしていくか、所有権(名義)を誰にするか、家をもらわない配偶者は財産分与としていくら受け取るべきか、保証人をどうするかなどを協議する必要が生じます。

 

②オーバーローン
不動産の査定金額よりも住宅ローンの残額が上回り、不動産を売却しても、ローンだけが残ってしまう状態のことをいいます。一般的には、夫婦の片方が住み続けてローンを支払っていくパターンが多いようです。ただし、それでも売却を希望する場合は、残ったローンの支払いをどうするのかという点を検討する必要があります。

■家を売却する場合の注意事項
[アンダーローンの場合]
売却によって得た利益は財産分与(原則2分の1ずつ)をすれば、不動産の処理は完了です。具体的には不動産を売却して、住宅ローンの残額や売買の手数料などを差し引いた残りを2人で分割します。
頭金をどちらかの親が出していたり、どちらかの婚前の貯金から出していた場合には、その部分を特有財産として財産分与の対象から除外する必要がでてきますので、注意が必要です。
また、売却の際、仲介業者の選定や売却金額に関して合意ができないような場合もありますが、より高い金額で売れる方がどちらにとっても良い結果となるため、協力していく必要があります。
[オーバーローンの場合]
売却してもローン(債務)のみ残ります。売却後の支払がわずかで完済できる見込みなのであれば、売却して支払いを完了する方法もあります。
残額が大きい場合には、借金を完済することは不可能ということで、破産をしてローンの残額をゼロにするという方法もあります。

■家を売却しない場合の注意事項
自宅の名義が夫、住宅ローンの名義も夫の場合を例に、考えてみましょう。

[夫が家に住む場合]
妻が家を出て、住宅ローンの債務者である夫が家に住み続ける場合、不動産の名義が夫であれば、そのまま夫が住み続けて住宅ローンの支払も行っていきます。
しかし、妻もローンの負担をしていた場合(連帯保証や連帯債務)、夫婦間で「夫が支払う」と合意をしても、金融機関に対する責任を免れることはできません。妻が債務を免れるためには金融機関と交渉し、妻が連帯保証人などから外れる手続きを行います。保証人を外れる場合は新たな保証人を立てたり、保証協会の利用を求められたりします。まとまった金額の入金を求められたりすることが多いでしょう。
なお、アンダーローンの場合は、そのプラス部分について財産分与の対象となります。夫は離婚の際にそのプラス部分の原則半分の金額を妻に対して支払う必要があります。また、妻の特有財産をもって住宅ローンの一部を支払っているなどの事情があれば、それも財産分与の個別な事情として考慮される場合もあります。

[妻が家に住む場合]

(1)夫が住宅ローンを支払う
妻が子どもの親権者になる場合には、養育費をもらう代わりに、夫が住宅ローンを支払い続けるという方法があります。しかし、夫にとっては住んでいない家なので、ローンの支払を継続してくれる保障はありません。夫がローンの支払を滞納すれば、妻は立ち退きを迫られることになる可能性があり、非常に不安定な立場におかれるため、夫が住宅ローンを支払わなくなった場合に備えておきましょう。また、住宅ローン債務者と居住者が異なる状態となるので、事前に金融機関との協議が必要です。

(2)妻が住宅ローンを支払う
住宅ローンの債務者を夫から妻に変更する場合は、妻が安定的な職業に就いており、それなりの経済力がなければ難しいのが実情です。ただし、債務者を夫にしたまま、事実上妻が支払うことは可能です。

(3)妻の名義に変更する
妻が家を取得する場合、名義をそのままにしておくと夫の財産として扱われてしまう場合もあります。しかし銀行側は、住宅ローンを完済するまでは名義変更に応じないケースが多いのが現状です。そのため、離婚の際に、「住宅ローンが完済した後は妻の名義にする」など、名義変更について明確に合意しておく必要があります。
不動産の価値がローン残額より大きくアンダーローンの場合は、そのプラス部分については財産分与の対象となるため、妻から夫への財産分与の支払が必要となるので注意しましょう。
※ほかにも、他人に賃貸して、賃料収入をローンの支払いに回す方法など、専門家と相談することによりさまざまな方法があります。

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