裁判離婚

裁判離婚

裁判離婚とは、調停で離婚の合意ができず調停が不成立となった場合に、どちらか一方が離婚を求める訴訟を提起し、裁判上の手続きによって離婚することをいます。
裁判の手続は厳格で複雑です。裁判で離婚の手続きを進める必要がある場合には、必ず弁護士に相談しましょう。

■裁判所が離婚を認める5つの理由
片方が離婚を請求しているけれども、他方がそれに応じない場合、裁判所がその夫婦を離婚させるかどうかを決定します。裁判所が離婚を認める理由は、法律上、5つあります。
①浮気・不倫(不貞行為)
離婚請求される側の配偶者ある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結んだ場合。
配偶者の浮気が発覚した時は、浮気相手にも慰謝料を請求することができます。※ただし、夫婦仲が破綻した後に不貞行為が始まった場合には、その不貞行為を理由とする離婚請求や慰謝料の請求が認められないこともあります。
②悪意の遺棄
正当な理由もなく同居を拒む、協力しない、同一程度の生活を保障してくれないという場合。
たとえば、妻が重い病気にもかかわらず夫が長期間生活費を送らない、幼い子どもがありながら夫が行き先も告げずに共同生活を放棄して自宅を出ていった等の状況です。
③3年以上の生死不明
3年以上、配偶者が生きているのか死んでいるのか確認できない状態が現在まで続いている場合。
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
夫婦互いの協力義務を十分に果たし得ないほど精神病が強い場合。
※ただし、離婚を求める配偶者が誠意ある介護・看護をしてきた、障害のある配偶者に対する離婚後の療養生活の保証があるといった事情がないと離婚が難しい傾向にあります。
⑤婚姻の継続がし難い重大な事由
夫婦仲が破綻していて、回復の見込みがない場合。破綻の事情としては、以下のようなものが挙げられます。
・性格の不一致・・・性格の不一致だけでは離婚は認められませんが、一定期間別居している等、婚姻生活が破綻している場合は認められる可能性が高くなります。
・勤労意欲の欠如・・・配偶者の怠惰。まじめに働かない。
・親族との不和・・・配偶者の親族との不和について、無関心または親族側に同調するなどが原因で、夫婦関係も不仲になり、その修復に努力をしない等。
・暴力・虐待・・・配偶者から暴行や虐待を受けている。
・性交不能・拒否・性的異常・・・配偶者が性交不能であることを隠して婚姻した場合、配偶者が継続的に性交渉を拒否する場合、性的異常がある場合等。
・アルコールや薬物中毒・難病など・・・アルコールや薬物中毒、重度ではない精神障害や難病、重度の身体的障害があり、それが原因で夫婦関係が破綻している場合。
※離婚を求める配偶者が、介護、看護をしていない、障がいや病気の配偶者の生活の保障がない場合は、離婚できない時もあります。
・過度の宗教活動・・・夫婦のうち一方が、宗教活動に過度に専念し、夫婦関係が破綻している場合。
・犯罪行為・服役・・・犯罪行為・服役により、配偶者の名誉を傷つけ、家族の生活を困難にさせた場合。
※犯罪行為・服役の事実のみで離婚できるわけではありません。

■自分の不貞で裁判離婚できる場合
浮気をした当事者が配偶者に対して離婚を請求する場合、その浮気が離婚原因であると、基本的には離婚請求は認められません。しかし、次の事情を総合考慮して、夫婦仲の破綻に原因のある配偶者からの離婚請求が認められることもあります。
• 別居期間が長い
• 親の養育が必要とする子供がいない
• 離婚しても他方の配偶者が精神的、社会的、経済的に苛酷な状態にならない
• 離婚を認めても著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がない
• 夫に原因があり、夫婦仲が破綻している場合

離婚には、それぞれ個別の事情があり離婚ができるかどうはその事情、内容によって決まります自分一人で悩まずに、弁護士に相談することをお勧めします。

■裁判離婚の流れと期間
裁判の期間は、内容にもよりますが1~2年程度かかると覚悟をしておきましょう。第一審で勝訴した場合も、相手が控訴すればさらに裁判は長引きます。

<裁判の流れ>
① 調停終了
離婚は身分関係に関する重大な事項ですので、裁判を行う前に、当事者間で協議をする機会を持つことが必要と考えられています。そのため、まずは調停を行う必要があります。

② 訴状を家庭裁判所に提出する
離婚をしたい側の当事者が訴状を提出します。
自動的に調停から訴訟に移行する訳ではありません。

③ 裁判所から期日の指定、被告への訴状の送達、被告への答弁書の催告がされる

④ 被告が答弁書を提出する

⑤ 第1回の口頭弁論期日
訴状提出から約1か月程度で第1回の口頭弁論期日が開かれます。

⑥ 双方がそれぞれの主張を書面で提出する
離婚原因、親権、財産分与など、その裁判で争いとなっている事項に関して、双方が書面を提出してそれぞれの主張を提出します。
裁判の期日はだいたい1か月ごとに設定され、その度に書面が提出されることになります。この手続きにかかる期間は、その事件での争点の数やその内容によります。

⑦ 尋問
当事者や関係者が、裁判所の法廷にて、自分の代理人、相手方の代理人、裁判官からの質問に答える手続きです。

⑧ 弁論の終結
双方の主張が出尽くしたと判断されると、弁論が終結し、このとき以降、主張や証拠の提出ができなくなります。
↓(1~2か月後)
⑨ 判決

※ 訴訟の間、裁判官の勧告や当事者の申し出により、和解の協議が行われることがあります。
和解の協議がまとまると、和解離婚が成立することになります。

■ 離婚訴訟のメリット
・ 相手が離婚を拒否していても、離婚事由があれば、離婚が成立する
・ 当事者間で合意が期待できない争点について、裁判官の判断が下される
・ 相手方に弁護士がつき、進行がスムーズになる可能性がある

■ 離婚訴訟のデメリット
・ 夫婦間の出来事が公の場で議論されることになる
訴訟になると、会社等に通知されるようなことはありませんが、原則として公開されることになりますので、この点に抵抗がある人は注意が必要です。
・ 徹底的な争いになり、紛争が激化する
夫婦間の出来事は客観的な資料が少なく、お互いに言った言わないの水掛け論になってしまうことが多く、書面のやりとりで紛争が激化することが多くあります。
・ 時間がかかる
和解ではなく判決になる場合には、短くても半年程度はかかってしまいます。
・ 戸籍に裁判離婚である旨が記載される
・ 裁判所に納める費用や弁護士費用がかかる

■ 最後に
離婚訴訟はできる限り避けたいものですが、きちんとその内容を理解していれば、恐れる必要はありません。
まずは訴訟にしなくてもよいように戦略を立てて協議や調停を進めつつ、最終的には訴訟をしてもよいという気持ちで進められると、ストレスを軽減できるかと思います。

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