付き合っていたのに、相手が既婚者だと知ったようなケースでは、貞操権の侵害を受けたといえますが、相手に慰謝料を請求できるケース、できないケースがあります。
貞操権の侵害で慰謝料請求できないケース
貞操権を侵害された女性は、民法709条・710条に基づき、相手男性に対し、損害賠償として慰謝料を請求することができます。
ただ、相手男性と性的関係を持っただけでただちに女性が貞操権を侵害されたことにはなりません。
ここでは、相手男性に対して貞操権侵害を理由に慰謝料請求できない5つのケースを紹介します。
肉体関係がない
結婚を持ちかけられていない
証拠がない
既婚者だと知っていた
既婚者だと知っても交際を継続していた
肉体関係がない
そもそも相手男性と肉体関係がなければ、性的関係の相手を決める自由意思が損なわれたことにはなりません。
貞操権侵害とはならず、慰謝料を請求できないのは当然です。
結婚を持ちかけられていない
相手男性と性的関係を持ったとしても、それが男性から結婚を持ちかけられたからではなく、女性が勝手にそう思い込んだ、あるいは結婚は別問題として性的関係を持ったのであれば、女性の自由意思で性的関係の相手を選んだことになります。
女性の自由意思が損なわれていない以上、貞操権の侵害には当たらず、慰謝料を請求することはできません。
証拠がない
相手男性によっては、その女性と肉体関係を持ったこと、自分が独身を装ったり結婚を持ちかけたことを否定する場合があります。
こうした場合、それらを裏付ける証拠がなければ、貞操権侵害を証明できず、慰謝料請求は不可能です。
既婚者だと知っていた
相手男性が既婚者であることを女性が知っていた場合、女性はあえて既婚者との性的関係を持ったわけですから、相手を選ぶ自由意思が損なわれたとはいえません。
相手男性の貞操権侵害を理由に慰謝料請求することは無理です。
既婚者だと知っても交際を継続していた
相手男性が既婚者であることを知りつつ交際を続けていたのであれば、性的関係を持ったことへの女性の意思は、「既婚者だと知っていた」という前ケース以上に自主的といえます。
貞操権侵害はあり得ず、慰謝料請求は不可能といわざるを得ません
慰謝料の請求を検討している、あるいは、できるかどうか知りたいという方は、無料相談などを活用して、弁護士に相談してみてください。
貞操権の侵害を受けた場合の注意点
貞操権を侵害された場合、相手男性へ慰謝料を請求できることは、これまで見てきたとおりです。
ただ、その場合に気を付けることが2つありますので、心にとどめておきましょう。
貞操権の侵害による慰謝料請求には期間制限がある
1つ目は、貞操権侵害を理由に慰謝料を請求できる期間が限られていることです。
貞操権侵害を理由とする慰謝料請求権は、次のいずれかの期間が過ぎると消滅します(民法724条)。
女性が貞操権侵害の事実と侵害者を知ってから3年間。
自分が貞操権を侵害されたことと相手男性が誰であるかの2つを知ってから3年が過ぎると、慰謝料請求権が時効により消滅し、請求できなくなります(同条1号)。
3年の消滅時効期間を定めたのは、男性が慰謝料請求されるかもしれない立場にいつまでも置かれることを防ぐためとされています。
貞操権侵害の事実があってから20年を過ぎると、慰謝料請求権が消滅し、請求できなくなります(同条2号)。
女性が侵害の事実や侵害者を知る知らないに関係なく進行する期間です。
貞操権を侵害された女性は、この2つの期間が過ぎないうちに慰謝料を請求することが必要です。
まとめ
既婚者なのに「自分は独身だ」と言って女性を騙し、性的関係に及び、時には中絶や妊娠にまで至らしめるふしだらな男性が存在するのが現実です。
人を騙して、性的な関係を結ぶことは許されない行為です。「相手が嘘をついていたなんて信じられない」とショックは大きいですよね。
こうした男性に対し、女性自身が、貞操権侵害を理由に慰謝料の支払いを求めても、真摯に対応することは期待できません。
こうした問題の解決は、やはり法律と交渉のプロである弁護士の力を借りるのが一番です。
相手男性によって貞操権を侵害され、慰謝料の支払いを求めたいと思ったら、まず弁護士に相談しましょう。