養育費は,離婚時に取り決めることが一般的ですが,その後,長いときには約20年もの長期間にわたって支払いが続きます。その期間の間には,子どもの成長や親の環境の変化に伴い,養育費が十分でなくなったり,養育費を支払う側が過酷な状況になることもあります。

そのため,一度養育費の金額について合意したとしても,その後,合意時には想定されていなかった事情の変更があった場合には,養育費の増額又は減額の請求をすることができることになっています。

では,具体的にどのようなことが起こった場合に,養育費が変更されうるのでしょうか?

増額されうる事情

-支払っている側の収入が増えた

支払っている側の収入が増えたことにより,増額が認められることがあります。ただ,多少の増加があっただけでは,合意時に想定されていた範囲内のものと判断される可能性もあります。

また,問題となるのは,どのように収入の増加を把握するかということです。離婚後,相手方の収入の変化を知ることは容易ではありませんので,基本的には協議をしてみないとこの事情の変更があるのかを知ることは難しいでしょう。

-支払いを受けている側の収入が減った

支払いを受けている側の収入が合意時よりも減ってしまった場合,子どもの生活も脅かされてしまうため,養育費が増額されうる事情となります。

具体的には,病気で稼働できなくなった場合や業績悪化による給与の減額等が想定されます。ただし,稼働できる状況にあるにも関わらず稼働しなくなった場合等には,減る前の収入を基準とされることになるでしょう。

-子どもの進学に伴って教育費が増加した

養育費の中にはすでに一定の教育費が考慮されていますが,これを超えて教育費がかかるようになった場合に,養育費の増額が認められる可能性があります。

ただし,子どもが進学したからといって,必ずしも増額が認められるわけではありません。例えば,子どもが支払う側の同意なく私立学校や医学部等に進学したために教育費が増加したとしても,このような事情による増額は認められないでしょう。

-子どもが大きな病気やけがになり治療費が多くかかるようになった

通常かかる医療費については,すでに養育費の中に含まれているのが通常です。増額の理由となるのは,想定されていないような病気やけがによる医療費の増加です。

-物価が大幅に高くなった

減額されうる事情

-支払っている側の収入が減った

具体的には,病気等で稼働できなくなった場合や会社の業績悪化による給与の減額等が想定されます。自主退職,会社都合の退職などがあった場合でも,稼働能力があるとみなされれば,ある程度の収入があることを前提として養育費が算出されます。

実際に収入が増えた場合だけでなく,合意時に働いていなかった当事者が,子どもが成長したため働ける状況になったと判断される場合にも,減額されうる事情とされることが考えられます。

-支払っている側が再婚した

再婚相手が働ける状況であれば減額の要素とはなりませんが,子どもの養育が必要だったり,介護や自身の病気等で稼働できない場合には,支払う側が扶養すべき人として認められ,減額の理由となりえます。

-支払っている側に新たに子どもができた

再婚相手の子どもと養子縁組をした場合も,これに含まれます。

-支払いを受けている側が再婚し,その再婚相手と子どもが養子縁組をした

養子縁組をした再婚相手が一次的に子どもを扶養すべきと考えられ,養育費を支払う必要がなくなる場合もあります。

-子どもの進学に伴って教育費が減少した

合意時に多額の塾代を考慮して養育費を高額に設定していた場合等には,通塾の期間が終了すれば,減額される可能性があります。

-物価が大幅に下がった

増額・減額の請求をする方法

-協議

当事者間で話合いができる状況であれば,合意の上で変更することができます。相手に事情を説明して,必要に応じて事情が変更したことを証明できる資料を提示し,金額について話し合いましょう。当事者間で円満に合意ができるような場合でも,後でトラブルになることを避けるよう,合意書を作成しておくべきです。

-調停

協議で合意ができない場合,家庭裁判所に調停を申し立てる方法をとることになります。具体的には,裁判所がHP等で用意している申立書を記載し,添付書類,切手,印紙等と一緒に家庭裁判所に提出します。郵送での提出も可能です。すると,裁判所が相手方に対して,養育費変更に関して調停の申立てがあったことを書面により通知してくれます。また,裁判所が調停の日程を設定して双方の当事者に知らせますので,当事者は決められた日程に裁判所に出向いて話し合いをすることになります。

実際の話合いは,調停委員がいる部屋に各当事者が入れ替わり入って進めていきますので,相手方と直接話をしないで済みます。1回の調停で合意ができることもありますが,1か月から2ヶ月に1回の頻度で何度か調停期日を重ねて,話し合いをすることになります。

-審判

調停でも合意ができない場合には,調停の場で「審判」という手続きに移行してもらうことになります。「審判」は,当事者の話合いではなく,裁判所が具体的な金額を決めてくれる手続きです。

具体的な場面で実際に増額・減額の請求をした場合に予想されるメリットやデメリットについては,専門家に問い合わせてみることをお勧めします。