配偶者が同意なく家を出て別居を開始した場合に、この「悪意の遺棄」に当たるとしてご相談に来られる方は少なくありません。
しかし、離婚原因として民法に規定されている「悪意の遺棄」は、不貞や長期にわたる生死不明などの他の離婚原因と同等のものであり、単なる同意のない別居よりも限定的です。
そのため、裁判で悪意の遺棄が離婚原因として認定されることは少ないと言われています。

「悪意の遺棄」とは?

「悪意の遺棄」は、正当な理由なく、婚姻関係から生じる同居・協力・扶助義務(民法752条)を履行しないことを言います。
「遺棄」は、置き去りにする場合のみではなく、相手を追い出したり、家に入れないようにしたりという行為も含みます。

正当な理由の存否は、別居の目的、別居による生活状況の変化、生活費の送金の有無等を考慮して、社会的・倫理的に非難に値するのかが判断されます。

具体例

具体的に、これまで悪意の遺棄と判断された事例には、以下のようなものがあります。
・ 妻が半身不随となったにも関わらず、夫が妻を置き去りにして、長期間、生活費の送金もしなかった事例(浦和地判昭和60年11月29日)。
・ 夫が妻に相談することなく、行き先も告げずに、2人の幼児とともに妻を置き去りにして上京した事例(浦和地判昭和60年11月29日)。
・ 夫がアメリカでの勤務を望み、妻に同居要求したが、妻が渡米を拒み、他の男性と不貞関係を持った事例(東京家八王子支審昭和61年9月10日)。