モラハラは、身体的な暴力と違って、見分けがつけにくいものです。例えば、「馬鹿じゃないの?」という言葉は、たまのけんかで出た程度であれば気にするほどではありませんが、常に人格否定を繰り返す中で言われているのだとしたらモラハラの言動のひとつとなりえます。

また、被害者は、繰り返し加害者から人格を否定されることで自信をなくし、正常に物事を判断することが難しくなりがちです。これらの要素から、被害を受けている人が別居や離婚を決意するのは容易ではありません。

モラハラの被害者の方の離婚を支援してきた中で、被害から抜け出すために重要だと考えるポイントをお伝えします。

自分一人で抱え込まず、周囲の助けをかりる

加害者のモラハラにより精神的に追い込まれていると、被害者は洗脳されているような状態になり、自分の考えに自信が持てなくなります。
何かおかしいと思っていても、それを他人に話したら、結局自分が間違っていると言われるのではないかという恐怖を抱えることにもなります。
確かに、相談先を間違えると「もう少し我慢したらいいんじゃない?」等と言われ傷をさらに深くしてしまうことになりかねませんので、注意が必要です。

まずは電話で女性相談センターや配偶者暴力相談支援センターなどに相談してみましょう。
愛知県女性相談センター→こちら
名古屋市配偶者暴力相談支援センター→こちら

体調にも不調がでているような場合には、心療内科へも通院することをお勧めします。「心療内科 モラハラ ●●(地域名)」で検索すると、モラルハラスメントの問題に取り組んでいる医師を探すことができますので、安心して通院できるでしょう。

なお、心療内科に通院すると子どもの親権をとれないのではないかとの不安があるかもしれませんが、子どもの養育に支障が生じるような疾患になっていない限り問題はありません。また、通院の記録はモラハラの被害を主張する証拠のひとつとなりえます。

まずはとにかく加害者と物理的な距離をとる

加害者から日常的にモラハラを受けている環境で、離婚に向けて考えを整理したり環境を整備していくことは現実的ではありません。

まずは別居をして加害者から離れた状況を作ることが重要です。別居は、話し合ってお互いに合意をしなくてもすることができます。法律上は夫婦の同居義務(民法752条)が規定されていますが、正当な理由があれば別居は可能であり、モラハラを受けていることは正当な理由になるからです。

その際、自分が主になって子どもの世話をしているのであれば、子どもを連れていくことも問題ありません(ただ、お子さんが混乱しないように説明をしたり、環境を整えてあげることは重要です。)。

別居先として実家や知人の家を頼ることができない場合でも、一時保護施設(シェルター)、母子生活支援施設等を利用する方法や、市営住宅の抽選などに応募しておく方法があります。民間の企業でも、母子の生活を支援しているくれるところがあります。

離婚が決意できず、もし戻ることになったときに加害行為が悪化することを懸念して躊躇してしまう方もいるかと思います。そのような場合には、家族にも協力してもらい実家に長めに滞在しなければならない理由を作るなどすることも考えられます。

子どもや自分の将来を考える

 「子どもから親を奪ってしまうのは申し訳ない。」このような理由で離婚に踏み切れない方も多いかと思います。しかし、モラハラ行為が日常的となっている家庭で育つことの弊害が大きいことにも注意しなければなりません。

加害者のモラハラ行為は、仮に子どもにはあまり向けられていない場合であっても、子どもに大きな影響を与えています。
子どもが加害者と別居した後も長期的に心療内科への通院が必要になってしまうこともありますし、加害者と同じ言動をしたり自己評価が低くなってしまったりといった子どもの将来にも影響を及ぼす痕跡を残すこともあります。

また、モラハラの被害者は適応障害やうつ病を発症してしまうことが珍しくありません。このような症状がでてしまうと、長期にわたって影響を受け続ける可能性があります。

依頼者の方が、子どもの通院が長引く中、「子どもに影響が出るとわかっていれば・・・」、「もっと早くに決断していれば・・・」と後悔する姿を見てきました。
悪い影響を少しでも抑えるために、早めに決断をすることが大切です。

離婚の協議は自分で行う必要はない

多くの場合、モラハラの加害者と被害者が理性的に話し合いを進めることは困難です。一見冷静な話し合いに見えても、加害者が被害者を冷静に攻撃しているというだけで、建設的な内容ではありません。
そのため、被害者にとっては、離婚に向けて相手方の同意をとるということのハードルは非常に高いものになります。

しかし、相手と直接話し合いをする必要はありません。物理的な距離さえとってしまえば、後は専門家に依頼をしてしまえばよいのです。
また、そのことで自分が通常他の人ができることができない等と自己評価を下げる必要もありません。モラハラの加害者が異常であって、その異常な言動をする人に彼らにとっての「通常」の対応をしなければならない義理はありません。

シングルマザーの生活苦等がよくニュースになっていますが、手助けをしてくれる機関はたくさんあります。
加害者から離れることさえできれば、精神的な負担がとれ、生きていくための活力がわいてくる方も多くいます。

勇気をだして行動してみることをお勧めします。