離婚を検討する際には、経済的な影響の大きさが考慮要素になることが多いです。 結婚していた年数が長い場合、特に、財産分与でどの程度の金額が見込まれるかにより、離婚後の生活が大きく異なります。

そこで、今回は、財産分与を適正に行うために知っておくべき基礎知識とポイントをご紹介します。

財産分与とは

夫婦が協力して築いた財産を分ける手続きです。婚前契約をする等して法律と異なる分与方法をとることに合意していない限り、多くの場合、財産は2分の1ずつに分けることになります。夫婦の収入に差がある場合、多く収入を得ていた方はこのような分け方を不公平と主張することが少なくありませんが、2分の1以外の方法で分与が決まることは稀です。

財産分与の対象となるのは、通常、婚姻から別居までの期間に築いた財産です。別居後に増減した財産については、財産分与の対象とはなりません。

手続きと合意書の作成方法

当事者間で話し合いをして財産の分け方を決めることができる場合には、合意できた内容を離婚協議書の内容のひとつとして記載することになります。財産の精算に不安が残る場合や、分割払い等になりすぐに精算できない場合には、当事者間で合意書を作成するよりも、公正役場で公正証書を作成しておくことをお勧めします。公正証書にしておくことで、支払い等が行われなかった際に強制執行を行うことが容易になります。

当事者間の話し合いではまとまらない場合、裁判所の調停の制度を利用することができます。 調停でも合意ができない場合、審判という手続きに移行することもありますが、多くの場合、裁判で決着をつけることになります。

裁判所の手続きで決着した場合には、裁判所が公正証書と同様に強制執行を容易にする効力をもつ書類を作成してくれますので、公正証書を作る必要はありません。

財産分与の話し合いの進め方

一般的には、双方が自己名義で保有している財産内容に関する資料を開示し、財産目録を作成します。財産内容に関する資料としては、以下のようなものになります。

  1. 預金通帳  
  2. 自宅や自動車の査定書  
  3. 保険の解約返戻金の試算書  
  4. 証券会社の保有資産に関する明細書  
  5. 社内貯蓄や退職金に関する資料  
  6. 自宅や自動車のローンの明細書  
  7. 借金に関する資料

次に、作成した財産目録に従って、財産を半分にわけた場合の金額を計算します。  最後に、財産が半分ずつになるように、保有財産が多い方が少ない方に対して支払うことになりますので、その支払いの期日や方法を決めることになります。

財産分与で知っておくべきポイント

①財産の内容を把握する

通常、夫婦双方が自分名義で保有している財産分与の対象財産を開示して話し合いを進めます。しかし、正直に財産内容を開示する人ばかりではありません。そのため、夫婦の財産がどのような内訳になっているのか把握しておかないと、適正な財産分与を受けることができない可能性があります。できる限り詳細に把握するに越したことはありませんが、ある程度把握しておけば、裁判所の手続きで裁判所から金融機関等に照会をかけてもらえます。

具体的には、預金については銀行の支店名、保険や株式については扱っている保険会社や証券会社を把握しておきましょう。社内貯蓄なども会社に照会をかけることで把握可能です。

②対象になる財産とそうではないものに注意する

分与の対象となるのは、夫婦で協力して築いた財産といえるものです。そのため、結婚前から保有していた財産や財形貯蓄等は対象となりません。また、親から相続した財産も対象とはなりません。ただ、注意しなければならないのが、争いとなってしまった場合、このような対象ではない財産については、それを主張する側が証明する必要があるということです。

例えば、保有している預金500万円のうち、100万円は10年前に親からの相続で取得したものとします。この100万円がすぐに定期預金にいれられてそのままになっている場合、証明することは簡単です。しかし、生活費を管理する口座に入れられて何度も出入金が繰り返されているような場合には、500万円のうちの100万円が財産分与の対象でないことを証明するのは難しくなります。

そのため、争いになったときにどの程度自分の主張がとおるのかということを考えて話し合いをしなければ、思っていた金額と大きく異なる分与額となってしまう可能性があります。婚姻前の貯金や相続した財産を生活費として使用してしまっていた場合、法律上は、その返還を求めることができませんので、この点にも注意しましょう。

③財産を隠されないように注意する

離婚事件を扱っていると、離婚の協議が具体的になり始めたころに財産を動かして、財産分与で自分が有利に操作している形跡を見ることは珍しくありません。悲しいことですが、離婚協議時には、相手を信頼しすぎない方が賢明だといえます。財産内容の開示を受けて疑問をもった場合には、過去の通帳を確認したり取引履歴を取り寄せて、不審な動きがないか確認してみましょう。

離婚協議をしているときには、ストレスから早く解決したいばかりになってしまい、いろいろなことを諦めてしまいがちです。ただ、後で後悔することがないように、できることは知ったうえで判断をしていただきたいと思います。