離婚後の氏と戸籍


離婚後に請求・変更できる事項について

離婚を急ぐあまり、さまざまな条件を決めないまま離婚してしまうことがあります。そのような場合でも下記の内容については、離婚後に請求したり、合意内容を変更することができる可能性があります。

財産関係の請求

財産分与

離婚の成立から2年以内であれば、離婚する時に財産分与をしていなかった場合でも、財産分与の請求ができる可能性があります。

慰謝料

離婚の成立から3年以内であれば、離婚の際に慰謝料を決めていなかった場合でも、離婚に関する慰謝料を請求できる可能性があります。

離婚の際の慰謝料については、厳密には以下の2つに分類されます:

(1)不倫・暴力といった離婚に至った原因行為から生じる精神的な苦痛に対するもの
※精神的苦痛の原因となる行為を知ったときから3年以内に請求する必要があります。

(2)離婚をすることそれ自体から生ずる精神的な苦痛に対するもの

子どもに関する事項

養育費

将来の養育費については、離婚後も請求することができます。ただし、裁判上、過去の養育費の請求そのものは認められないことが多いです。ただ、過去の養育費の不払いの事実を考慮して将来の養育費の金額が増額されることはあります。

養育費の額を変更できる場合

養育費の額を決めたときには予想できなかった事情の変化があった場合、養育費の金額の変更ができる場合があります。

例えば以下のような場合:

(1)母親の収入が減った
(2)母親または子どもの重大な病気やケガ
(3)子どもの進学による教育費の増加
(4)父が病気になり失業した

その他の重要な権利

監護権者の指定・親権者の変更

子どものために必要がある場合は、離婚後に監護権者を決定したり、離婚の際に定めた親権者をもう一方の親への変更するよう請求することができます。

具体的には、以下のような事情が考えられます:

(1)子どもが親権者や監護権者に虐待されている

(2)親権者や監護権者が養育に熱意がない

(3)子どもが親権者や監護権者の変更を望んでいる

親権者の変更は裁判所の手続きが必要ですが、監護権者は話し合いで変更が可能です。しかし、変更には子どもの利益が最優先となり、厳密な理由が必要になります。

離婚後の戸籍について

復籍をする

婚姻により名字を変更しなかった人は、離婚後もそのままの戸籍にとどまります。

婚姻時に名字を変更した人は、離婚後、婚姻中の戸籍から転籍することになります。転籍後は、新しい戸籍を作成するか、父母の戸籍に戻ることになりますが、離婚後の名字等によって選択肢が変わります。

婚姻中の名字をそのまま使用する場合には、元の戸籍に戻ることはできないので、新たに自分の戸籍を作成することになります。

復籍した場合は、その後に新戸籍をつくることはできますが、逆に、新戸籍をつくってしまった後に、やはり婚姻前の戸籍に戻りたいと思っても戻ることはできないので、注意しましょう。

ややこしい離婚後の子どもの氏と戸籍

離婚後の子どもの氏と戸籍は非常にややこしいので、しっかりと理解して手続きを進めることをお勧めします。

子どもの氏と戸籍

結婚している夫婦の間に子どもが生まれると、子どもも同じ戸籍に入ります。夫婦が離婚しても子どもの戸籍に変動はありません。名字や戸籍は、親権者や監護権者とは関係がないので、その点は気にする必要がありません。

子どもの氏について

子どもの親権者が旧姓に戻っても、子どもの氏が変わるわけではないので、母親が親権者であり旧姓に戻った場合には、母親と子どもの氏が異なるということになります。

子どもの戸籍について

子どもの戸籍は両親の離婚後も、変わることなく元の戸籍に入っています。手続をしなければ従前のままであり、自動的に親権者である親の戸籍に移動することはありません。また、子どもと親の氏が異なる場合、子どもは親の戸籍に入ることができません。

婚姻により氏を改めた者が子どもの親権者になった場合には、子どもに自分と同じ氏を名乗らせない限り、自分と同じ戸籍に入れることはできません。

よって、婚姻によって氏を改めた親が親権者となり、子どもを自分の戸籍に入れたい場合には、家庭裁判所に対して「子の氏の変更許可(民法791条)」を申し立てて、子どもの氏を自分の氏と同じにする必要があります。

子どもの入籍手続

家庭裁判所による子どもの氏の変更許可のみでは氏の変更の効力は生じず、子どもが親の戸籍に入籍する旨の届け出をすることが必要です。これにより、子どもの氏の変更の効力が生じることになります。

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