婚姻費用分担請求


離婚をするまでの生活費はどうするの?

離婚に関する話し合いや、裁判所での手続を行っている間でも法律上は夫婦なので、お互いに生活を助け合う義務があります。たとえ別居中でも、生活費をもらう権利はあります。この生活費のことを婚姻費用と言います。婚姻費用が払われないような場合は、「婚姻費用分担請求」を行います。

■婚姻費用について

結婚をしている夫婦とその子どもたちが、通常の社会生活をつづけるための必要な費用のことで、具体的には、衣食住すべてにかかわる費用や、子どもの学費など、生活するための費用です。

法律上、婚姻費用については、夫婦がその負担能力(収入の大小等)に応じて、分担する義務を負っています。同居、別居にかかわらず、法律上の夫婦である限りは、この費用の支払い義務を負っています。夫婦が別居した際に、妻に比べて夫の方のが収入が高い場合は、別居していても妻に婚姻費用を払わなければいけません。また、婚姻費用が支払われない場合は、請求することができます。

■婚姻費用の金額と期間

[婚姻費用の金額]

婚姻費用は、月額いくらかという形で支払われるもので、夫側、妻側の収入や養育している子どもの人数によって金額が決められます。

金額の決め方としては、まず夫婦間で話し合いを行います。それでも決まらない場合は裁判所に調停の申立てを行います。調停手続きでは、調停委員を交えた話し合いにより決めていきます。婚姻費用の金額が決まれば、その金額を請求することができます。

もし、調停で話し合いをしても決着がつかないときは、家庭裁判所の裁判官が、審判という形で金額を決定します。

裁判所は、あらかじめ標準的な生活状況を想定し作成された「婚姻費用算定表」を利用して、金額を算出しますが、それぞれの事情に応じ、著しく不公平となるような特別の事情がある場合、その事情を考慮して金額が算定されます。

司法統計によれば、6万円から15万円程度となる場合が多いようです。

婚姻費用は日々の大切な生活費です。専門知識を持つ弁護士に相談することをお勧めします。

※司法統計年報25家事編平成30年のデータに基づきます。

※婚姻関係事件のうち認容・調停成立の内容が「婚姻継続」で、婚姻費用・生活費支払の取り決めがなされた場合で、かつ月払いする場合のデータです。

※%=小数点第二位以下四捨五入

[支払われる期間]

裁判所の一般的な考え方では、婚姻費用分担請求は、「請求したとき」からとされています。一部例外を除き、過去にもらえるはずだった婚姻費用を、後から遡って請求することはできませんし、「請求したとき」は「調停申立時」とされることも多くあります。(過去の未払いの婚姻費用が、財産分与を決める際の一つの事情として考慮されることはあります。)

このように、婚姻費用の支払い義務は「請求したとき」からとされていますので、別居後に婚姻費用を払ってくれない場合は、すぐに婚姻費用分担請求をするとよいでしょう。単にLINEのメッセージや内容証明郵便で請求するだけでなく、調停の申立てをしておくことをお勧めします。

婚姻費用分担義務が生じるのは、夫婦である期間なので、離婚が成立することで支払いは終了します。

■婚姻費用分担請求が認められない場合

婚姻費用分担請求の場合の「婚姻費用」は、片方の配偶者の生活費と、子どもの養育費とに分類されます。

子どもの養育費については、別居中に子ども自身または子どもを養育している配偶者が請求できるものです。養育費の負担は、「子どもに対する義務」なので、別居や婚姻関係が破たんした理由に問わず、子どもを養育している限り認められます。

しかし、片方の配偶者の生活費については、婚姻関係が破たん・別居に至った原因が、主に婚姻費用を請求する側にあるような場合には、権利の濫用として請求が認められない場合もあります。

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