慰謝料(浮気など)

浮気などの慰謝料をしっかりと受け取るために
離婚のときによく聞くのが「慰謝料」です。慰謝料とはいったい何でしょうか?慰謝料には様々な決まりがあり、その決まりを知らないともらい損ねる場合もあります。ケースによって様々ですので、まずは慰謝料の基本的な知識を知りましょう。

■慰謝料とは何か?
離婚のときの「慰謝料」は、「精神的苦痛を慰謝(なぐさめいたわること)するための損害賠償」で、離婚による苦痛に対して支払われます。
苦痛を受けた側の配偶者が、離婚に至る原因を作った配偶者に対して請求できます。
そのため、どちらかが一方的に悪いわけではない「性格の不一致」や「価値観の相違」などの場合は、慰謝料を請求できない可能性もあります。

■慰謝料が認められる例
離婚の際の慰謝料については、大きく2項目に分類されます。

(1)浮気や暴力など、離婚に至った原因行為から生じる精神的な苦痛に対するもの
(2)離婚し、配偶者の地位を失うことから生じる精神的な苦痛に対するもの

裁判では、 (1)の典型的な例として次のような場合には慰謝料が認められています。

【慰謝料が認められる例】

• 浮気・不倫(不貞行為)
• 暴力、悪意の遺棄
• 婚姻生活の維持への不協力
• 性交渉の拒否

あくまでも例ですので、下記に該当しない場合でも慰謝料が認められる場合もたくさんあります。
慰謝料が請求できるのは夫婦関係の破綻による離婚ケースなので、主に自分の側に原因がある場合は、逆に請求される可能性があります。

相手の浮気が原因で離婚する場合は、浮気相手に対して慰謝料を請求することができますが、慰謝料として決められた額以上を請求することはできません。

<例>300万円の慰謝料が認められるケース

①浮気相手から300万円受け取る・・・配偶者からは慰謝料が受け取れない。
②浮気相手からの慰謝料が150万円受け取る・・・、配偶者に残りの50万円を請求できる。

【慰謝料が認められない場合】
不貞行為前に夫婦関係が破綻していた場合や、不貞相手が婚姻をしている事実を知らなかった場合などは、慰謝料を請求できない場合もあります。

■慰謝料の相場について
慰謝料の金額は、「離婚に至った原因行為の内容」「結婚期間の長さ」「精神的苦痛の程度」などを総合的に考慮し決定されます。原因行為が悪質であり、結婚している期間が長い方が慰謝料の金額は高くなる傾向にあります。

【慰謝料の相場】
個別の具体的な事情によって金額は異なりますが、100万円~300万円程度になることが多いようです。
事案によっては50万円程度だったり、逆に300万円以上と認定されたりするケースもあります。

【慰謝料の決め方】
いくら被害を受けたからと言って、勝手に慰謝料の金額は決められません。
慰謝料がいくらになるかは、第三者である裁判所が理解できるような主義・立証ができるができるかどうかが重要になってきます。いつ、どんなことがあったのか。それによる苦痛や精神的被害を受けたのか。またうつ病などの病気を発症した場合は、診断書などの証拠が有効です。

裁判所で慰謝料を決定する場合、次のような要因を総合的に判断して算定します。

[一般的な要因]
有責行為の態様、有責行為の度合い、破綻に至る経緯、婚姻期間(同居期間・別居期間)、婚姻に至る経緯、婚姻生活の実情、婚姻中の協力度、家族関係、子どもの有無・人数、財産分与の額、親権・監護権の帰属等

[請求者側の要因]
年齢、性別、職業、資産、負債、収入、初婚・再婚の別、再婚の可能性、自活の能力、妊娠中絶の有無、自殺未遂やノイローゼ・流産・性病感染などという有責行為によって発生した結果、健康状態

[被請求者側の要因]
年齢、性別、職業、資産、負債、収入、婚外子の出生や認知の有無、婚姻中における贈与、生活費不払いの有無、関係修復の努力の有無等

説得できる主張をすることは意外と難しく、またどのような証拠を集めればよいのか、個人では限界があります。そもそも証拠がない場合、個人では立証することが不可能です。離婚に詳しい弁護士に相談することで、裁判所が理解しやすい有用な証拠を集め、説得的な主張を組み立てることができます。また、専門家ならではの知識で慰謝料の算定を行うこともできます。

■慰謝料の請求手続きについて

(1)不貞に関する慰謝料の考え方
既婚者と知りながら肉体関係を持った場合、相手の配偶者が被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があり、愛情があったかどうかは左右されません。
つまり、どのような事情であれ、既婚者と知りながら肉体関係を持った第三者(浮気相手)は、慰謝料請求に応じなければなりません。
しかし、「独身である」と信じていた場合や、夫婦関係がすでに破綻していた場合は、浮気が夫婦関係を破綻させたとはいえないので、浮気相手に慰謝料を請求できない可能性があります。また、慰謝料は重ねて請求することはできないため、配偶者からすでに多額の慰謝料を受領しているような場合には、浮気相手へ慰謝料請求をすることはできません。

(2)慰謝料を請求する
浮気相手と配偶者は、慰謝料を二人で負うことになります。「不真正連帯責任」といいます。たとえば、300万円の慰謝料が認められるケースでは、浮気相手と配偶者のふたりに、トータルで300万円の支払いの責任を負うことになります。

(3)離婚を考えていない場合の慰謝料
この場合は不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟を単独で起こします。
なお、離婚をすることによる精神的な苦痛に対しての慰謝料請求はできず、慰謝料の金額は離婚する場合と比較して低額になります。また夫婦関係の継続が前提となるため、配偶者に対して訴訟を起こすのではなく、浮気相手などに対して慰謝料を請求することになります。

(4)子どもが慰謝料を請求する
浮気相手が意図的に子どもへの愛情を阻止したり、子どもに対して直接肉体的精神的苦痛を与えた場合は、慰謝料の請求が可能です。この場合、因果関係を明らかできる証拠をもとに請求する必要があります。

(5)慰謝料の時効
意外に知られていないのが、時効です。
慰謝料は3年間で時効になります。

①離婚をすることから生ずる精神的苦痛に対する慰謝料は、原則として離婚が成立してから3年を経過してしまうと、請求することができません。
②不倫を知ってから離婚までの精神的な苦痛に対する慰謝料は、損害および加害者を知った時点で、時効の期間のカウントが開始されてしまいます。

浮気・不倫を知ってから慰謝料の請求までに時間が経っている場合には、時効間近になっていることもあります。時効が迫っている場合は、時効の完成を猶予させる方法があります。詳しくは、弁護士にご相談ください。

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