調停員が仲立ちをしてくれる調停離婚
夫婦間の話し合い(協議)で折り合いがつかない場合や、相手が話し合い自体に応じない場合には、調停による離婚を目指すことになります。
調停は,裁判所を利用する紛争解決の方法であり、簡単に利用できるように工夫されています。
その概要と利用のための手続きについて,ご説明します。
離婚調停とはどのような手続きか?
調停は,裁判所で行う紛争解決の手続きです。
当事者双方が裁判所に出向き,それぞれの言い分を「調停委員」に話します。「調停委員」が,紛争解決に向けて,双方の意見を伝え,調整していきます。つまり,第三者を介して,裁判所で話し合いを行う手続きです。
「調停委員」は、弁護士、医師、大学教授といった専門家や地域活動で活躍してきた人などから選ばれており、基本的に、各事件に男女1名ずつが振り分けられています。基本的に、同じ人がその事件の終結まで担当します。
調停では、離婚するかどうかだけでなく,親権者,財産分与等の離婚に関する条件や円満に修復するための条件についても協議をすることができます。
裁判と違い,裁判官が「判決」を下すことはありません。そのため,当事者の双方が合意しなければ,解決には至りません。
どのようなときに利用するのか?
当事者間での話し合いがうまくできない場合に利用することが多いです。
話し合いを全く行っていない段階でも,利用することができます。
また,話がまとまっているときでも,その内容をきちんとした書類として残すために,調停を利用し,「調停調書」を取得することもあります。
利用方法
① 申立て
申立先:相手の住所地の家庭裁判所もしくは合意で定めた家庭裁判所
必要書類等:
- 申立書とそのコピー1通(家庭裁判所のHPでダウンロード可能)
- 夫婦の戸籍謄本
- 年金分割のための情報通知書(年金分割の請求をする場合)
- 収入印紙1200円分
- 郵便便切手(各家庭裁判所の基準による)
(場合により,追加の資料を求められることがあります。)
申立方法:持参もしくは郵送
② 裁判所が書類を受理
③ 裁判所から当事者双方に第1回の調停期日の通知書や必要書類が送付される
約1ヶ月程度
④ 調停当日
調停当日の流れ
① 家庭裁判所の調停の受付に行き,呼出状に記載されている事件番号や氏名を伝える。案内された待合室で待機する(相手とは別の待合室になります。)。
② 調停委員が待合室まで来て,別室へ案内される。
③ 調停委員の自己紹介や身分証明書の提示後,調停を行うまでの経緯,望んでいる解決方法等について聞かれる(約30分間)。
④ 待合室にもどって待機する。この間に,調停委員が相手から事情を聞く。
⑤ こちらの意見聴取と相手方の意見聴取を何度か繰り返す(約2,3時間)。
⑥ 次回の日程を調整し、当日の内容や次回までの検討事項について確認。
*当事者双方が同席してこの確認作業を行う裁判所があります。同席が難しい場合には、そのことを調停委員に伝えます。
調停の終結の態様
・調停成立
話し合いがまとまり、離婚・別居条件・修復条件などについて合意することです。
・調停不成立
話し合いがまとまらない場合、何も取り決めをせず、調停が終わります。この場合、離婚を求める側が、離婚訴訟を行うか検討することになります。
・調停取り下げ
調停を申立てた側が、その申立てを取り下げることで、調停が終わります。取下げを行う理由は、修復することにした、海外転勤で当面出席できないことになった等、さまざまです。
・調停に代わる審判
離婚すること自体は合意しているものの、親権、養育費、財産分与などの条件について合意ができていない場合、その条件の部分について、裁判官が判断して「審判」をすることがあります(家事事件手続法284条1項本文)。
調停成立後の離婚手続き
・離婚届の提出
調停で離婚をすることに合意すると、法律上、離婚が成立します。しかし、戸籍上には反映されません。そこで、市区町村役場に届出を行う必要があります。
届出期間:調停成立から10日以内
届出の場所:本籍地又は届出をする人の所在地の市区町村役場
提出書類:
- ①離婚届(証人や届出をしない当事者の署名・押印は不要です)
- ②調停調書謄本(調停成立時に申請をすると、後日、発行されます。裁判所から自宅に郵送してもらうことができます)
- ③戸籍謄本(本籍地以外で届出をする場合)
調停にかかる時間は?
事案によるため一概にはいえませんが、申立から終了または調停が不成立となって終了するまで3ヵ月~半年程度かかることが多く、なかには1年以上もかかるケースもあります。
調停離婚で気をつけることは?
一旦調停が成立してしまうと、調停の内容に不服を申し立てることはできません。調停委員が間に入ってくれるものの、うまく意見を主張できないと不利な条件で調停が成立してしまうことがあります。
合意ができない点や少しでも疑問点があれば、必ず調停が成立する前に徹底的に話を詰める必要があります。
弁護士に依頼せずに自分で進める場合であっても、弁護士に相談をしながら進めることをお勧めします。