離婚後の氏と戸籍

離婚後の名字や戸籍はどうなる?

婚姻によって氏(名字)を変更した方(主に女性)は、離婚した後に氏をどうするのか、戸籍をどうするのかについて考えておく必要があります。

■離婚後の氏(名字)について

日本では夫婦別姓が採用されていないことから、婚姻する夫婦は、民法750条により、夫または妻のどちらかの名字にしなければなりません。
結婚の際に、もともとの名字を変えずにいた人は、離婚してもそのまま変わることはありません。
一方、結婚の際に相手方の名字に変えた人は、離婚後は2つの名字のどちらにするかを選択することができます。一つは、旧姓に戻すという選択肢です。もう一つは、結婚時の名字をそのまま名乗るという選択肢です。
法律上、基本的には旧姓に戻ります。そのため、結婚時の名字を離婚後もそのまま名乗っていきたい場合は、離婚の日から3ヵ月以内に「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」提出します。
この届け出は、離婚の届け出と同時にすることも可能です。「離婚後の氏は、すみやかに確定させるべき」という政策的観点から、たとえ自然災害があったとしても「3ヵ月以内」という期限が延長されることはありません。
離婚して3ヵ月以上経ってから、結婚していたときの氏を名乗りたいと思った場合は、「氏の変更許可の申立て」(戸籍法107条1項)を家庭裁判所に対して行うことになります。離婚時の氏の変更申し立ては、他の場合より認められやすいとは言われていますが、「単に気に入らない」というだけでは認められず、現在の氏により社会生活上で不利益・不便が生じているなどの事情が必要です。家庭裁判所への申立に必要な時間的・労力的な負担もかかります。離婚を決意するに際しては「氏をどうするか」という問題も決めておくとよいでしょう。なお、届け出先は本籍地または届け出人の所在地の役所になります。

■離婚後の戸籍について
[復籍をする]
婚姻により名字を変更しなかった人は、離婚後もそのままの戸籍にとどまります。
婚姻時に名字を変更した人は、離婚後、婚姻中の戸籍から転籍することになります。転籍後は、新しい戸籍を作成するか、父母の戸籍に戻ることになりますが、離婚後の名字等によって選択肢が変わります。
婚姻中の名字をそのまま使用する場合には、元の戸籍に戻ることはできないので、新たに自分の戸籍を作成することになります。
旧姓に戻った人は、「復籍」と言って原則として婚姻前の戸籍に戻りますが、新しい戸籍作ることもできます。子どもを自分の戸籍に入れたい場合には、三世代を同じ戸籍に記載することはできないため、新しい戸籍を作ることになります。
復籍した場合は、その後に新戸籍をつくることはできますが、逆に、新戸籍をつくってしまった後に、やはり婚姻前の戸籍に戻りたいと思っても戻ることはできないので、注意しましょう。

■ややこしい離婚後の子どもの氏と戸籍
離婚後の子どもの氏と戸籍は非常にややこしいので、しっかりと理解して手続きを進めることをお勧めします。
[子どもの氏と戸籍]
結婚している夫婦の間に子どもが生まれると、子どもも同じ戸籍に入ります。
夫婦が離婚しても子どもの戸籍に変動はありません。
名字や戸籍は、親権者や監護権者とは関係がないので、その点は気にする必要がありません。

(1)子どもの氏について
子どもの親権者が旧姓に戻っても、子どもの氏が変わるわけではないので、母親が親権者であり旧姓に戻った場合には、母親と子どもの氏が異なるということになります。

(2)子どもの戸籍について
前述した通り、子どもの戸籍は両親の離婚後も、変わることなく元の戸籍に入っています。手続をしなければ従前のままであり、自動的に親権者である親の戸籍に移動することはありません。また、子どもと親の氏が異なる場合、子どもは親の戸籍に入ることができません。
そのため、婚姻により氏を改めた者が子どもの親権者になった場合には、子どもに自分と同じ氏を名乗らせない限り、自分と同じ戸籍に入れることはできないのです。
よって、婚姻によって氏を改めた親が親権者となり、子どもを自分の戸籍に入れたい場合には、家庭裁判所に対して「子の氏の変更許可(民法791条)」を申し立てて、子どもの氏を自分の氏と同じにする必要があります。
なお、親が婚姻前の戸籍に復籍した場合で、親がその戸籍の筆頭者ではない場合には、子どもがその氏を変更しても、その戸籍に入るわけではありません。この場合は、子どもの親を筆頭者とする新しい戸籍がつくられることになります。戸籍は夫婦および夫婦と氏を同じにする子どもごとにつくられる(戸籍法6条)ことになっているため、親が復籍した戸籍の筆頭者がその親の両親(子どもにとっては祖父・祖母)であると、親、子ども、孫の三世代の戸籍になってしまい、戸籍法に反する事態になってしまうからです。

⑶子どもの入籍手続
家庭裁判所による子どもの氏の変更許可のみでは氏の変更の効力は生じず、子どもが親の戸籍に入籍する旨の届け出をすることが必要です。これにより、子どもの氏の変更の効力が生じることになります。

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