養育費の回収に関するセミナー

養育費の回収に関するセミナーを開催いたしました。動画が苦手という方向けに記事にしましたので、ご一読くださいね。

私たちは弁護士法人ハレの弁護士の森上と若松です。当法人は、家庭問題に強い法律事務所です。現在、名古屋と滋賀に拠点があります。これまでそれぞれ500件以上の離婚事件を経験していることから、本日は、その経験等を踏まえ、特にシングルマザーやシングルファーザー向けに養育費の回収方法についてお話ししたいと思います。

養育費を受け取っている家庭は少ない

全国ひとり親世帯等調査(平成28年厚生労働省)」によると、養育費を継続して受け取っている母子世帯は24%ほどという実態が明らかになっています。このような状況、特に母子家庭が大変な思いをしていることが多く、最も影響を受けるのは子どもです。離婚した相手と関わることが苦痛で養育費を諦めてしまう方も多いですが、養育費があれば、その分仕事を減らして子どもと一緒に過ごせ時間が増えたり、少し遠出して思い出を作ったり、子どもが希望している習い事をさせてあげることもできるかもしれません。ですので、養育費を受け取っていない方が養育費の支払いを受けられるような情報提供を行い、子どもたちの笑顔を増やしたいと考えています。

本日のセミナーでは、養育費の基礎知識から始め、具体的な回収手順や事例の紹介、そして弁護士の活用方法についてお話しします。また、事前にいただいた質問にもお答えします。さまざまな情報を提供し、皆さんが養育費の回収について理解を深めるお手伝いをしたいと思います。

 養育費の基礎知識

まず、養育費の基礎知識について説明します。養育費は子どもの監護や教育に必要な費用として、子どもと一緒に暮らしていない親が、子どもと一緒に暮らしている親へ支払います。養育費の金額は、子どもの人数や年齢、支払い側と受取り側の年収等によって決まります。裁判所で決めるときには、裁判所が公表している算定表を使用して計算されます。

成人年齢が18歳に引き下げられましたが、養育費の終期については、裁判所で決める場合には、20歳とすることが原則です。

養育費が支払われないときには、強制執行といって、支払い義務を負っている人のお給料や預金等を差し押さえる手段があります。

この手段をとるためには、「債務名義」というものを取得しておく必要があります。債務名義とは、裁判所が作成した調停調書や判決等の書類や強制執行に応じるための執行認諾文言が含まれた公正証書のことです。当事者間で離婚協議書を作成し、署名押印した書類のみがある場合、この債務名義がないことになりますので、債務名義を取得した後、強制執行の手続きを行う必要があります。

裁判所が作成した債務名義がある場合には、強制執行を行う前に、履行勧告や履行命令といった手続きをとることもできます。これらは、裁判所から相手に対して、養育費を支払うように促してもらう制度です。履行勧告は裁判所に電話で依頼することで簡単に利用できますが、相手に対する強制力はありません。履行命令についは、相手が支払わない場合、過料の制裁に処されることがあります。

差し押さえを進める場合には、差し押さえをする対象を特定する必要があります。相手の勤務先や資産の確認が必要です。

差し押さえ対象と特定が難しい場合には、財産開示手続や第三者からの情報取得手続といって、相手の財産に関する情報を提供してもらう手続きを行うことができます。

財産開示手続は、裁判所が養育費を支払う側の人に連絡し、財産目録や所有する財産に関する質問に答えるよう求める手続きです。これを拒否すると、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります。

第三者からの情報取得手続は、不動産や預金、給料などの財産に関する情報を関係機関から取得する手続きです。たとえ相手の居場所が分からなくても、相手の勤務先を知ることができる等、相手の財産を特定できる可能性が高まります。

差し押さえができる財産を特定することができたら、その財産を差し押さえる手続きを行います。

養育費に関する強制執行は、給与等の継続的な給付があるものについて、将来にわたって差し押さえることができるという特徴があります。以上が、養育費や強制執行に関する基礎知識です。

ここで、実際に給与の差し押さえをした事例をご紹介します。

養育費回収事例①

妻Aと夫Bが離婚しました。夫Bのモラハラが主な離婚理由だったためで、小学生の子どもは夫に会いたがらない状況です。妻Aと夫Bは養育費を4万円と合意し、自力で公正証書を作りました。しかし、子どもの意向で面会交流の実施が難しくなったことから、夫Bは養育費の支払いを停止しました。妻Aは貯金を使い、両親から援助を受けて生活しましたが、生活が非常に苦しい状況が続きました。そこで、弁護士に相談し、養育費の回収を依頼しました。公正証書があったことから、依頼した次の月には、夫Bの給与を差し押さえて、養育費の支払いを確保することができました。

次に、預金を差し押さえた事例についてご紹介します。

養育費回収事例②

この事例では、養育費を支払う側が会社の経営者であったため、役員報酬があることは分かっていました。しかし、会社に対して役員報酬を差し押さえても、決定権を持つ相手が拒否しているため、支払いをしてきませんでした。この状況に対処するために、まず弁護士会を通して金融機関に照会をかけ、相手の預金口座に預金がいくらあるか、取引履歴を把握しました。その結果、住宅ローンの引き落としが見つかりました。住宅ローンを組んだ金融機関に対して差し押さえが行われると、住宅ローンの一括払い等を求められる可能性があります。そのため、相手方は差し押さえ解除のために養育費が支払われるようになりました。

相手方が住宅ローンの引き落としをしていることや、取引がある銀行を差し押さえることで、将来の支払いも確保できる可能性があります。そのため、諦めずに手続きを進めることが重要です。

養育費回収における弁護士の活用方法

次に、弁護士の活用方法について説明します。

養育費回収では、相手の財産に関する調査が一番難しい部分です。例えば、財産開示制度を利用しても、相手が嘘をついた場合、財産を把握することが難しいことがあります。したがって、様々な方法を試して手がかりを集め、進むべき道を見つけることが重要です。そのためには、専門家に依頼することが得策だと思います。

弁護士に依頼する最大のメリットは、プロに任せられる安心感です。また、面倒な手続きを全て代行してもらえるため、ストレスが軽減されます。さらに、労力や時間を節約できるため、子どもや仕事に時間を割くことができます。

費用はかかりますが、将来的にもらうことができる養育費に比べると、費用の方が明らかに少ないケースがほとんどだと思います。

まずは相談して、回収の見込みや費用対効果について、弁護士と一緒に考えてみてください。

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