サレ妻が気をつけるべき名誉毀損リスク
目次
名誉毀損とは:サレ妻が知っておくべき法的基礎知識
不倫被害に遭った配偶者(サレ妻)が感じる怒りや悲しみは計り知れません。その感情から不倫相手に対して取った行動が、思わぬ法的トラブルを招くことがあります。弁護士法人エミリアでは、年間200件以上の不倫・離婚問題を扱う中で、サレ妻が陥りがちな名誉毀損リスクとその対処法についてお伝えします。
名誉毀損の法的定義と成立要件

名誉毀損とは、公然と事実を摘示し、人の社会的評価を低下させる行為を指します。刑法230条では「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。名誉毀損が成立する主な要件は以下の3点です:
- 公然性があること(不特定または多数の人が知りうる状態)
- 事実の摘示があること(真実であるかどうかは問わない)
- 名誉・社会的評価を低下させる内容であること
サレ妻が不倫相手について事実を公表する場合、たとえその内容が真実であっても、名誉毀損が成立する可能性があります。「事実だから言っても問題ない」という認識は法的に誤りです。
SNSでの投稿が招く名誉毀損リスク

デジタル時代において、SNSは最も名誉毀損リスクが高い媒体の一つです。怒りや悲しみから不倫相手の実名や写真をSNSに投稿することは、名誉毀損となりえます。
特に注意すべきは、「匿名アカウント」や「限定公開」の投稿でも、容易に伝番しうるとして法的に「公然性」が認められる可能性があることです。また、SNS上での拡散は制御不能になりやすく、一度拡散した情報は完全に削除することが困難です。
一時の感情で投稿した内容が、賠償請求に発展する危険性を常に意識しましょう。
サレ妻が陥りやすい具体的な名誉毀損行為とそのリスク
職場への告発行為と法的責任

不倫相手の職場に不倫の事実を伝えるという行為は、サレ妻がしばしば考える「制裁」の一つです。しかし、この行為は名誉毀損やプライバシー侵害、業務妨害として法的責任を問われる可能性があるものです。
具体的には以下のような行為が法的リスクを伴います:
- 不倫相手の職場に電話やメールで事実を告発する
- 職場の上司や同僚に直接会って伝える
- 職場の公式SNSに投稿やコメントをする
こうした行為は、単に名誉毀損だけでなく、「業務妨害」としても責任を問われる可能性があります。
オンライン上での晒し行為とその法的影響

「晒し行為」(不倫の証拠や相手の個人情報をオンライン上で公開する行為)は、デジタル時代特有の名誉毀損リスクです。具体的には以下のような行為が該当します:
- 不倫相手の実名や顔写真をSNSで公開する
- LINEやメールのやり取りのスクリーンショットを公開する
- 不倫専用の告発サイトに投稿する
- YouTubeなどの動画サイトで実名を出して話す
これらの行為は名誉毀損に加え、プライバシー侵害や肖像権侵害にも該当する可能性があります。
法的責任の重さという点では、インターネット上の名誉毀損は特に深刻です。その理由は拡散性と永続性にあります。紙媒体と異なり、インターネット上の情報は瞬時に広がり、完全に削除することが困難だからです。
名誉毀損を避けつつ適切に対処する方法
法的に安全な対応策と感情コントロール

名誉毀損リスクを避けながら不倫問題に対処する方法として、以下のアプローチが効果的です:
- 感情の冷却期間を設ける:強い感情がある時は、少なくとも24時間は具体的な行動を起こさない
- 信頼できる専門家に相談する:弁護士やカウンセラーなど、守秘義務のある専門家に感情を吐き出す
- 証拠の適切な保全:名誉毀損せずに証拠を確保する(公開せず、法的手続きのために保管する)
- 法的手続きに集中する:感情的な制裁よりも、離婚調停や慰謝料請求など法的プロセスを優先する
特に重要なのは、「一時的な感情の発散」と「長期的な問題解決」を切り分けて考えることです。一時的に気が晴れる行動が、長期的な法的リスクや経済的損失につながる可能性があることを常に意識しましょう。。
合法的に慰謝料を請求する具体的ステップ

不倫相手に対して名誉毀損リスクなく慰謝料を請求するためのステップ
- 証拠の適切な収集と保全
・不倫の証拠を日時・場所・関係者とともに整理する(写真、動画、メール、通話履歴等)。
・配偶者との関係性を示す証拠(婚姻関係の証明、同居状況、生活実態など)を用意する。
・精神的苦痛を示す証拠(医師の診断書、カウンセリング記録、日記やメモ等)を揃える。
・すべての記録はスクリーンショットやログで保全し、改ざんの疑いが出ないようにする。 - 内容証明郵便による請求
・専門家(弁護士)に依頼して文面を作成するのが安全。法的に有効な形式で送付する。
・事実関係と請求額を明確に記載し、感情的な表現は避ける。
・回答期限を相当期間設け、未回答や不誠実な対応があれば次の手続きを明示する。 - 示談交渉
・弁護士を通じた交渉が最も効果的でリスクを下げられる。
・感情的にならず、法的根拠や証拠に基づいた交渉を心がける。
・示談書には再発防止条項と守秘義務、支払い方法・期限を明記する。 - 最終手段としての訴訟
・示談や請求で解決しない場合に選択する。
・訴訟提起前に証拠と法的根拠を弁護士と最終確認する。
・訴訟は時間と費用がかかるため、費用対効果(回収見込みや時間的コスト)を考慮して判断する。
名誉毀損で訴えられた場合の対応策
名誉毀損の訴えを受けた際の初期対応

万が一、不倫相手から名誉毀損で訴えられた場合の初期対応
- パニックにならず冷静に対応する
・訴状や内容証明をしっかり読み、主張の内容を確認する。
・対応期限(異議申立てや答弁書の期限など)を確認し、期限を逃さない。 - 早期に専門家に相談する
・弁護士への相談は早ければ早いほど有利。できるだけ速やかに相談する。
・一人で対応せず、専門家のアドバイスのもと行動する。 - 証拠の保全と整理
・自分が発信した内容(SNS投稿、メール等)の記録を保全する(スクリーンショットやログ等)。
・不倫の証拠も日時・場所・証人・写真や音声などで整理しておく。
・削除可能なものは、まず弁護士と相談の上で削除を検討する。 - 対応方針の決定
・争うか和解するかを弁護士と相談して決定する。
・経済的・心理的コスト(費用、時間、精神的負担など)を考慮して判断する。
まとめ:感情に流されず法的に適切な対応を
不倫によって受けた心の傷は深く、相手に対する怒りや復讐心は自然な感情です。しかし、その感情に流されて法的リスクを伴う行動を取ることは、自分自身の将来にも悪影響を及ぼします。
名誉毀損リスクを避け、法的に適切な対応をすることが、長期的には精神的にも経済的にも最良の選択です。感情の発散は信頼できる人や専門家に対して行い、不倫相手への対応は法的手続きに従って冷静に進めることをお勧めします。
弁護士法人エミリアでは、サレ妻の皆様が法的リスクを負うことなく、適切な賠償や解決を得られるよう、専門的なサポートを提供しています。一人で悩まず、まずは専門家に相談することが、問題解決の第一歩です。