養育費についての解説
お子さんがいる夫婦が離婚する場合、離婚後のお子さんが生活のために、養育費について取り決める必要があります。養育費は、支払いを受ける側にとっても、支払う側にとっても、生活に大きな影響を及ぼします。そのため、双方にとって、養育費はいつまで続くものなのか、状況によって変更することができるのか、気になるものです。今回の記事では、養育費の終期や、その途中の増額・減額の可能性について解説します。
養育費の支払いはいつまで?
養育費の終期については、法律で決まっているわけではなく、当事者間の合意で決めることができます。合意ができない場合、裁判所に決めてもらう方法もあります。裁判所が決める場合、原則的には、お子さんが20歳の誕生日を迎える月までと決められます。民法の改正により、成人年齢が18歳に引き下げられましたが、現状、それによって養育費の終期に関する判断の運用が変わっているということはないようです。
なお、合意をしている場合や裁判所が終期を定めた場合でも、その時期以前に就職・結婚等でお子さんが自立して生活することがあります。そのようなケースでは、お子さんが扶養を要する状態ではなくなりますので、養育費の支払い対象から外れることになります(ただし、支払う側としては、勝手に支払いを停止するのではなく、支払い義務がなくなったことを当事者間で確認して書面等に残すことをお勧めします)。
養育費の支払いが増額・減額されるケースは?
養育費の支払いが増額・減額される可能性があるケースを紹介します。
1:権利者・義務者の経済状況が変わった場合
「権利者」とは、養育費の支払いを受ける側です。「義務者」というのは、養育費を支払う側になります。給与の増減や病気による失職等で、権利者や義務者の経済状況にある程度の変化があった場合には、養育費の増額・減額が認められるケースがあります。
2:権利者が再婚して再婚相手と子が養子縁組をした場合
権利者の再婚相手と子どもが養子縁組をした場合は、養育費の減額請求が認められる可能性があります。再婚相手が経済的に問題がない場合、養育費が0となることが多いです。なお、権利者が再婚をしただけでは、再婚相手は子どもに対して扶養義務を負うことになりませんので、法律上、養育費には影響しません。
3:義務者が再婚して子どもが生まれた場合
義務者が再婚して子どもが生まれた場合、義務者が扶養する対象が増えることになりますので、養育費の減額請求が認められる可能性があります。なお、義務者が再婚しただけの場合、再婚相手も通常は自立して生活可能と考えられますので、扶養が必要と考えられる事情が認められない限りは、養育費減額の事情にはなりません。
養育費の増額・減額請求の方法
養育費の変更が認められる可能性がある場合には、以下のような順序で請求をしてみると良いでしょう。
相場の確認
養育費の増額・減額については、当事者間で話し合い、合意することができます。しかし、合意ができない場合には、裁判所に決めてもらうことになりますので、裁判所がどのくらいの金額に決めるのかという相場が大きな判断材料になります。相場については、裁判所が公開している算定表で大まかに把握することが可能です。
この算定表を確認する際、相手の収入がいくらなのか知っておく必要があります。離婚してしまうと、把握したり任意に開示をしてもらうことがなかなか難しいことが多いですが、可能な場合には、直近の源泉徴収票や確定申告書を開示をしてもらうと、事前に変更後の金額をある程度正確に予想することができます。
ただし、扶養人数が増えて減額を請求する場合等、算定表のみで金額を予想することが難しいケースもあります。そのようなケースでは、弁護士に相談してみることをお勧めします。
双方の意見を交換する
相場の確認をしたら、話し合いをして増額・減額を請求してみましょう。合意ができた場合には、その内容を公正証書にしておくことをお勧めします。
話が進まない場合や、相手方が話し合いにすら応じないという場合には次の調停手続きに進みます。
調停を利用して請求する
調停の申し立て方法や調停の進み方については、こちらをご参照ください(離婚調停に関する動画になりますが、手続きの進み方は同様です。)。
調停は弁護士に依頼することなくご自分で進めることが可能ですが、ご自身だけでは不安な場合は、弁護士に相談するといいでしょう。弁護士に代理人になるよう依頼をすることももちろん可能ですが、費用的に難しい場合、相談をしながら自分で調停を進めるという方法もあります。そうすると、安心して手続きを進めることができると思います。