離婚に関するご相談をお受けしていると、「離婚をするためにはどうやって進めたら良いでしょうか?」というご相談を受けることがよくあります。
離婚に向けて話し合いや手続きを進めていくときの大きな決断の一つが、「別居をして話し合いをしていくのか、それとも、同居をしたまま話し合いをしていくのか」ということです。
この決断をするときに参考にしていただくために、離婚前に別居するメリットとデメリットについて解説します。
離婚前に別居するメリット3つ
・冷静な話し合いがしやすくなる
・相手に離婚の意思が伝わる
・裁判で離婚が認められやすくなる
冷静な話し合いがしやすくなる
一緒に暮らしている環境と異なり、別居して夫婦の間で適度な距離をとることができると、日々の緊張やストレスが軽減し、相手について冷静に考えやすくなります。また、相手がいない環境で過ごすことで、自分の考えを整理し、相手に伝える準備がしやすくなります。
その結果、感情的な話し合いを避け、気持ちを落ち着かせて冷静に物事を話し合えるようになる可能性が高まります。
また、物理的にパートナーと別れて生活することで、場合によっては、相手の良さに気づき、「もう一度頑張ってみよう」と気持ちが変化することもあります。
相手に離婚の意思が伝わる
別居の2つ目のメリットは、離婚を真剣に考えていることが明確になることです。
自分は離婚を望んでいるけれども相手が離婚に同意していない場合、同居したまま生活をしていると、離婚の話がうやむやに流されてしまうようなことが多くあります。
慣れた生活を手放して一歩を踏み出すことは大変なことですが、多くの労力や費用を必要とする別居を決めて実行することで、あなたが本当に離婚を考えていることを相手に示すことができます。
裁判で離婚が認められやすくなる
日本では、夫婦がお互いに離婚に合意して離婚届を提出すれば、理由に関係なく離婚が成立します。しかし、合意が得られない場合は、裁判所に離婚を認めてもらう必要があります。裁判所に法律に基づいて離婚を認めてもらうためには、法律で決められている離婚事由が必要です。
別居期間が相当期間経過しているという事実があると、法律上の離婚事由の一つである「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、裁判所に離婚を認めてもらえる可能性が高くなります。
相当期間の別居は、法的な離婚事由になるという点で、別居は離婚を望む人にとって大きなメリットがあるのです。
離婚前に別居するデメリット
離婚前に別居をすることは、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあります。それぞれの内容について一つずつ解説をしていきます。
離婚に不利になるケースもある
慰謝料請求のための証拠集めがしにくくなる
元の関係に戻ることが難しくなる
離婚に不利になるケースもある
民法752条では、以下のように夫婦の同居義務を定めています。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
夫婦関係を維持するために十分な努力をすることなく相手の意思に反して別居を強行したり、自分が不倫をしてその不倫相手と一緒に住むために別居をする等、正当な理由なくこの同居義務を放棄したような場合を「悪意の遺棄」といいます。
別居がこの悪意の遺棄に当たると判断された場合、別居した側は、離婚の際に不利に判断される可能性があります。
悪意の遺棄と判断されないよう、別居をする際には十分な配慮が必要です。
証拠集めをすることが難しくなる
相手に不貞行為やDVがあった場合、証拠を提示することで離婚や慰謝料の請求が認められる可能性があります。
また、財産分与をしっかりと請求するためには、相手が管理している財産に関する証拠もあった方が良いです。
別居をして相手と離れて暮らすようになると、同居中よりも、証拠が集めることが難しくなります。
別居を考えている場合は、別居前に証拠を集めることが大切です。
元の関係に戻ることが難しくなる
別居することで、落ち着いて相手や自分のことを振り返ることができ、改めて相手の大切さに気づくことがあります。
しかし、一度別居をすることで、関係を再構築することが難しくなることもあります。物理的に一緒にいる時間が短くなり、何もなくても会話ができる環境もないため、相手が望まない限り、修復について話し合う時間を作ることができないからです。
また、別々に暮らすことに抵抗がなくなり、「離婚でいいや」と思うようになる人も少なくありません。
別居する場合、離婚することになる可能性が高くなることを覚悟しておく必要があります。