アルコール依存症のせいで、暴力をふるったり、仕事に行かなかったり、借金を作ったり…。配偶者がこのような状態になってしまった場合、離婚を考えてしまうのも当然です。
しかし、配偶者がアルコール依存症だからといって、直ちに離婚が認められるわけではありません。離婚できるかどうかは、離婚協議や調停で相手が離婚に応じてくれるかどうか、相手が応じてくれない場合には、裁判で婚姻関係が破綻していると判断されるかどうかにかかっています。
アルコール依存症は病気ですので、それが理由で結婚生活を営むことが難しく、婚姻関係が破綻していると裁判所に判断されれば離婚することができます。
ただし、アルコール依存症の度合いが低く婚姻関係が破綻しているとは言えないと裁判所に判断されれば、アルコール依存症という理由だけでの離婚は難しいでしょう。
つまり、ケースバイケースで離婚が認められる場合と認められない場合があるということです。
この記事では、アルコール依存症のパートナーと離婚できるケース・離婚の手順・離婚を成立させるためのコツなどについてご紹介します。
アルコール依存症で離婚できるケース
相手のアルコール依存症を理由に離婚できるかどうかについて、具体的なケースごとに解説していきます。
アルコール依存症を理由として離婚ができるケースは、大きく分けて次の4つです。
① 相手が離婚に同意するとき
相手が離婚に同意するときには、離婚協議、離婚調停、離婚訴訟のどのタイミングであっても、離婚することができます。
そのため、アルコール依存症を理由に離婚を思い立ったときには、まずは相手と話し合いをするのが重要です。アルコール依存症がまだそれほど進行していなければ、「迷惑をかけた」という罪悪感から、すんなりと離婚に応じてくれるケースも少なくありません。
相手が離婚に同意するときは、あわせて、子どもの親権・監護権、養育費、面会交流、財産分与といった条件についても決め、離婚協議書を作成しておくと良いでしょう。
② 日常的に暴力を振るわれたとき
相手が同意してくれない場合には、裁判所の判断を求めることになります。
相手が、お酒を飲んでDVや重度のモラハラをくり返すときは、離婚事由の一つの「婚姻関係を継続し難い重大な事由」にあたると判断され、家庭裁判所でも離婚が認められる可能性が高くなります。
このようなときは、DV・モラハラの被害にあったと裁判所に理解してもらうためにも、相手が暴力を振るったときの録音・録画や写真のような証拠を収集しておく必要があります。ただし、暴力・暴言などにより危険が迫っているときは、DV・モラハラの証拠が十分に収集できていなかったとしても、なにはともあれ別居を優先すべきです。
③ 「悪意の遺棄」にあたるとき
夫婦には相互扶助義務があるため、アルコール依存症となり、お酒ばかり飲んで仕事をしない、家事をしない、家庭をかえりみないというときは、この義務に違反して「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)という離婚原因にあたる可能性があります。
④ 長期間の別居期間があるとき
アルコール依存症が発覚したことから別居をスタートし、別居期間が長期間となっているときには、そのこと自体が「婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770条1項)とされて離婚を認めてもらえるケースがあります。
アルコール依存症の配偶者と離婚する手順
まずは、パートナーに離婚したい旨を伝えましょう。
相手が話し合いに応じるようであれば、親権、面会、財産分与や養育費などの離婚の条件についてもしっかりと話し合ってください。
アルコール依存症になっている相手は、冷静に話し合いに応じてくれない場合も多いです。そのような場合は、離婚の前に別居をするようにしましょう。別居期間が長く、かつ別居期間中夫婦間の交流も乏しいということとなれば、夫婦関係が破綻しているとして離婚が認められる可能性があります。
相手と話し合いができなかったり、協議がどうしてもまとまらないのであれば、調停や裁判といった裁判所の手続きに進むことをお勧めします。裁判所に関与してもらうことで、相手が話し合いに応じるようになったり、話がまとまりやすくなるケースが多くなります。
アルコール依存症のパートナーと冷静な話し合いをすることは通常はハードルが高いと思われますので、弁護士を通して話し合う方がスムーズでしょう。なお、弁護士に依頼すれば、離婚調停やその先の離婚訴訟となったときも手続きを一任できるので心強いです。
アルコール依存症のパートナーと離婚するのは、通常の離婚よりも精神的にきついものがありますし、証拠が必要になるなどスムーズに離婚を進められないことも多く大変です。
離婚を少しでも考え始めたタイミングで弁護士に相談してみると、離婚すべきなのか、離婚するならどう進めていけばいいのか、一緒にあなたの味方として離婚について考えてくれるはずです。
ぜひお近くの弁護士に相談をしてみてください。
どうすれば今後の自分の幸せに繋がるのかを考えることが大切です。
専門家のアドバイスを受けながら少しずつでも環境を変えていきましょう。