婚姻費用請求の手順と金額について
家事や育児に追われていると、仕事をするのが難しいと思います。その場合、パートナーから金銭を受け取らなければ、生活するのは現実的に難しいでしょう。夫婦が別居している場合でも、基本的に収入の少ない側は収入の多い側に対して、生活費を請求することができます。この生活費を、婚姻費用と言います。
今回の記事では、婚姻費用請求をする具体的な手順や金額の目安をご紹介します。
婚姻費用分担請求の具体的な流れ
婚姻費用を請求する場合、まずは夫婦で話し合って金額や支払い方法を決めていきましょう。このとき、後々トラブルになる事態を防ぐため、決まった内容は必ず書面に残しましょう。話し合いで決まらなければ、家庭裁判所に調停を申し立てます。
書類を用意する
婚姻費用分担請求の調停を申し立てるときに必要になる書類はこの4つです。
- 戸籍謄本
- 婚姻費用の分担請求調停の申立書
- 確定申告書や給与明細など、申立人の収入に関する資料
- 相手方の収入に関する書類(こちらはできればで良し)
これらの書類の他にも、印紙や郵便切手が必要になります。それらを揃えたら、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出しましょう。郵送でも提出できます。
調停の流れ
調停を経験したことがないという方にとっては、調停がどのような流れで進んでいくのかわからずに不安を感じてしまうことでしょう。そこで、調停がどんな流れで進行していくのか紹介します。
- 調停期日が通達される
婚姻費用分担請求を申し立てると、調停の期日が記載された呼出状が申立人と相手方の住所へ届きます。呼出状は申し立てから約2週間で到着し、調停の期日は申立てから約1ヶ月後です。 - 調停室で話し合いが行われる
期日当日に家庭裁判所へ到着すると、受付をした後、待合室で待機することになります。待合室は夫婦別ですので、お互いに顔を合わせる心配はありません。その後、調停室に呼び出されて調停がはじまります。
申立人が先に調停室に呼ばれます。調停委員さんから、申し立てた経緯などについて質問されるので、事実と自身の気持ちをきちんと回答しましょう。 - 相手方の聞き取りの後、再度調停室へ
申立人の聞き取りが終わると、調停室に再度案内され、待機することになります。その間に、調停委員さんは、相手方の言い分を聞き取ります。相手の言い分を聞き取った後、再度、申立人が調停室へ呼びだされて、相手方の言い分を伝えられた上で、申立人の意見を確認されたりします。
このように、調停委員さんが、双方から意見を聞いて、合意が成立するように進めていきます。1回の期日で終了することは珍しく、何度か調停の期日を重ねていくことになります。
調停が成立した場合
調停の結果、両者が金額に合意できれば、調停が成立します。調停の内容については、裁判所が調停調書という書類を作成してくれます。調停調書は自宅に郵送してもらえます。調停調書があれば、支払いがされないときに、給与の差し押さえ等の強制執行の手続きを行うことができます。非常に重要な書類であるため管理に気をつけましょう。
調停が不成立になった場合
調停が不成立になった場合は、審判に移行します。審判では、裁判所が金額を決定します。
婚姻費用の金額
裁判所が決める際には、「標準算定方式」といって、双方の収入、子の人数、年齢によってある程度一律に算出されます。裁判所は、この算定方式に基づいて算出される婚姻費用をHPに掲載して公開していますので、こちらを参考にしてみてください。
ただ、私立の学費や塾代等、この算定表に基づいて算出されるものに加算して請求できるものもありますので、注意が必要です。
もう一つの注意点として、裁判所が婚姻費用の支払いを命じる開始時期は、原則的に、調停を申し立てた月になります。もらえる婚姻費用を取りこぼさないためには、婚姻費用が受け取れなくなったらすぐに申し立てましょう。
婚姻費用の請求手続きに不安がある場合には、離婚問題や婚姻費用の請求に強い弁護士に相談してみましょう。法的な観点から的確なアドバイスがもらえるため、お金の不安をなくしていくためにもおすすめです。